これから冬を迎えるというのに、全国的に新型コロナウイルスの感染者が拡大しています。『緊急事態宣言』が再び出されてもおかしくない状態です。そこで、もし仮に『緊急事態宣言』が出されることを想定して、当時のことを振り返ることにも意味があるかと思いますので確認をしておきましょう。
目次
『緊急事態宣言』の法的効果
新型コロナの感染拡大防止対策として2020年4月16日に対象が全国に『緊急事態宣言』が出されました。
『緊急事態宣言』を受け、各都道府県知事から外出自粛、施設・店舗等の利用制限等の「要請」がされました。これはあくまでも「要請」であり、海外の「ロックダウン」のような強制力があるものではありません。
しかし、この『緊急事態宣言』は、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づくものであり、企業等は「協力するように努めなければならない」ことになっています。
『就業禁止』規定の法的根拠
労働安全衛生法68条(病者の就業禁止)には、「伝染性の疾病その他の疾病で、厚生労働省令で定めるものにかかった労働者については、厚生労働省令で定めるところにより、その就業を禁止しなければならない」と定められています。
この規定を根拠に、従業員が伝染病にかかった際の『就労禁止』が就業規則に具体的に定められていると思います。
新型コロナウイルスは、労働安全衛生法の「厚生労働省令で定める疾病」ではありませんが、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(感染症法)により、「第二類感染症」に指定されています。
新型コロナウイルスやインフルエンザに感染した従業員に対して、感染症法による『就労禁止』を指示する場合は、就業規則に規定をするようにして下さい。
『休業手当』の支給義務について
会社は、会社の責に帰すべき事由により従業員を休業させた場合、従業員に対して、平均賃金の100分の60以上の休業手当を支払う必要があります(労働基準法26条)。
繰り返しになりますが、政府や都道府県知事等による「外出自粛要請」自体には法律上の強制力はありません。
ですが新型コロナウイルスの感染が疑われる従業員がいる場合には、会社は自主的な判断で「就業禁止」とするはずです。
これは他の従業員への感染を予防する上でも、事業主にとっては致し方ない判断だと思いますが、この場合は原則として「休業手当」の支払いが必要になります。
ただし、「不可抗力」によって休業された場合は、「休業手当」を支払う必要がありません。
ではこの場合の「不可抗力」とはどのようなものでしょう。
『休業手当』の支払義務が免除される「不可抗力」とは
天災地変などの「不可抗力」によるもの
1)「不可抗力」とは、地震や台風等の天災地変によって工場が倒壊する、戦争によって原材料の供給途絶で営業・操業が不可能など、「会社側・使用者の努力」だけでは解決することができない場合です。
但し、あくまでも「会社側・使用者側の努力」によっては、どうにかできるような場合は、不可抗力として判断されない場合がありますので注意が必要です。
2)今回の『新型コロナウイルス』による営業自粛の協力依頼や要請などを受けて休業する場合ですが、この「不可抗力」になるのかどうか?
厚生労働大臣も明言していますが、営業自粛の協力依頼・要請を受けて休業したとしても、機械的に「不可抗力」になりません。
普通に考えると、国等からの「営業自粛の協力依頼・要請」に応えるだから、休業手当は免除されるように思えますが、「営業自粛の協力依頼・要請」に強制力がない為、単純に「不可抗力」判断されません。
不満を強く感じるところですが、『雇用調整助成金』を上手に活用して下さい、というのが国の対応です。
事業主が通常の経営者としての最大の注意を尽くしてもなお避けることができない事故
(1)上記に何度も記載した「会社側・使用者側の努力」の云々ですが、小難しい表現をすると「使用者として休業を回避するための具体的努力を最大限尽くしている」かどうかとということになります。
具体的には、テレワーク勤務を含む自宅勤務などの方法により、どうやったら従業員を業務に従事させることができるかを、最大限に検討しているかどうか、そして、実行しているかどうかを個別に検討されます。
(2)従業員が都道府県知事による就業制限の対象となった場合、会社側は当該従業員に対して就業禁止する必要があります。この場合は休業手当の支払義務は生じないことになります。
この件については、以前にも投稿をしていますので、そちらをご覧ください。
『【新型コロナウイルス】発熱で会社を休む場合、「欠勤」扱いとなるのか、「休業」扱いとなるのか』
まとめ
営業自粛の協力依頼・要請で実際に休業をした場合、じり貧になるだけでなく、その間成長していく機会も減ってしまう、というのが問題だと感じています。
このような辛い時期だからこそ、この時を、どう自社の「成長」に結び付けられるか、経営者の姿勢が問われる時ではないでしょうか。そういう意味では、経営者の方々は情報・意見交換を頻繁にされていますよね。
私も、今だからこそ切磋琢磨していける良き仲間を増やして、日々成長していきたいと思います。
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