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来るAI時代に向けた業界変化
私ども社会保険労務士の業界のみならず、その他の業種においても同じかもしれませんが、最近の業界動向の一つとして、「専門化」による差別化を図る傾向性があるように思います。
例えば、会社である顧客と締結する(労働保険や社会保険の必要な手続きを包括する)顧問契約を中心とした形態はベースにしつつも、就業規則や採用コンサル、DXツール導入コンサル等の「専門特化」したサービスを付加しているようなケースです。
これは至極当然な流れです。
何故なら、AI時代を向けて徐々にAIが進化している中で、社労士業務の約8割近くがAIにとって変えられるとも言われるのですから、何かしらの方向転換が必要です。その方向転換の一つが「専門特化」という訳です。
この流れは、業界人と喜ばしいと考えています。
失われた30年を清算するタイミング
従前が同じようなことを繰り返しで、今起きているようま変化がなかったこと自体が不衛生であった、と今なら言える。
例え皆さんの会社組織で変化を起こしていてもです。
それは、今の変化と比較すれば、きっとその変化は変化の内には入っていなかったと感じるはずです。
従前の試みが変化ではないなら?
「従前の試みが変化の内に入らない」のなら、極端な話、同じようなことを繰り返していたとも言えます。
だとすると、既存の業務の繰り返しでは大なり小なり組織としてはマンネリ化し、組織に属する人たちも無意識的にも飽きを感じていただろうし、もっと言えば、全く異なる業務もやってみたいという欲求が沸いても不思議ではなかった状況だったはずです。
仮に、そのように感じたとしても自然であり、不心得者とそしられる筋合いのものでもありません。
私たち日本人の「失われた30年」
どんなに小さな会社であったとしても、大なり小なり努力をして、今よりも効率よく稼ぐ努力はしていたはずです。
日本全体が、そのように前向きに変化をし続けていたのであれば何故「失われた30年」という、個人的に無駄な時間を過ごすことになってしまったのか。
変化の幅が小さかったのか、
もっと変化を繰り返すべきだったのか、
そして、小さな変化を大きな変化にシフトしていけば良かったのか。
どこかで変化を遠ざけてしまうのも人間の性の一つである以上、変化そのものを止めてしまったのか。
例えて言えば、絶壁をよじ登りながら、途中でよじ登る目的や目標を忘れた如く、絶壁の途中で横になれる窪み(くぼみ)を見つけた私たち日本人はそのまま横になり続けてしまった。横になりながら、もっと居心地よく横になれないか程度の努力はしていた。それが「失われた30年」だったとも言える。
私たち日本全体がそうだったのだから、社会全体が辟易(へきえき)感があったのも、日本人らしさも発揮できないでいたのも当然であったと思う。
私たち日本人が本領発揮する時代
私日本人が世界史的にも輝いていたときは、新しい技術や文化をどんどん取り入れて、変化を受けれて社会全体が変化をしていたときだったと思う。
そうであるなら、今変化を求めない会社組織は大きなリスクを抱えることになるのは、小学生ですら解っていることです。
日本が抱える問題の一つである超高齢化社会にどんどん進む中で生じる2025年問題。
日本の基幹システムが世界的に遅れることで経済的損失が生じると言われる2025年の崖もあります。
そういう意味では、「失われた30年」を清算し、新しい時代に突入する時代の転換点が今であると言えます。
特に2024年が重要であることは言うに及ばないはずです。
だからこそ、変化すべき壁が大きければ大きいほど、私日本人の本領発揮できる時代ですからワクワクしますね。
変化の激しさにご注意を
冒頭、私ども社会保険労務士業界も「専門特化」を多くお見受けできるくらい変化をしていることを述べました。
ここからが私が本稿で書きたい内容を述べます。
「専門特化」をしていく業界変化は望ましい限りですが、この「専門特化」は毒にもなることをご注意頂きたい。
何故「専門特化」が毒にもなるのか。
そこを説明する前に「専門特化」することのデメリットを考えていたいと思います。
「専門特化」のデメリット
「専門特化」のデメリットは何だと思いますか、と質問されたら皆さんは何とお答えしますか。
ざっと思い浮かべると・・・・
①「専門特化」は、深堀りをすることなので、視野が狭くなる。
②「専門特化」である以上、他の組織と連携をしづらい。
③「専門特化」をし過ぎると変化がしづらくなる。
ざっとこんな感じでしょうか。
AI時代における「専門特化」
私が言う「専門特化」は毒にもなる、というのは、逆を言えば、従前の時代であれば「毒」になりづらかったとも言える。
何を言いたいかというと、AI時代が進めば進むほど、「専門特化」だけでは勝負にならない、ということです。
AI時代が進めば進むほど、複数のビッグデータを活用することで、複数のサービスを一気通貫で行われるようになります。この「一気通貫の複数サービス」には、「専門特化のサービス」では勝負にならない可能性が十分にある。
「専門特化」し合う会社同士での勝負であれば、それでも良いでしょう。
真っ向勝負で、どちらが優れているかを決すれば良い。
至極わかりやすい話しです。
ですが、「一気通貫の複数サービス」の会社相手だとそうはいきません。
同じように「専門特化」したサービス同志で勝負をします。
ですが、「一気通貫の複数サービス」の会社が相手だと、横から他のサービスをお客さまにどんどん提案されていく訳です。
剣と剣を交えている間に、敵の味方が横から切り付けて来るようなものです。
イメージが沸くでしょうか。
ただ単に「提携関係の会社グループによる複数サービス」のことを言っていません。
逆に「提携関係の会社グループによる複数サービス」だと、参加している提携関係の会社同士でも厳密に言えば別々の方向を向いているので、隙(すき)があります。その隙間に入る「専門特化のサービス」を展開するなどの方策はあるとは思います。まだやりようはあります。
ですが、「一気通貫の複数サービス」には、そのような隙間がありません。
軍隊に例えると、「統制がとれた隙がない軍隊」です。
先ほど述べた「剣と剣を交えている間に、敵の味方が横から切り付けて来るようなものです。」を軍隊レベルで表現すると・・・
「包囲殲滅戦」です。
正面だけでなく、横からも、後ろからも切り付けられてしまう。
歴史を見ても「包囲殲滅戦」されて生き残ることは至難です。
生き残るには「持久力」が必要ですが、社会変化が時間の経過とともに激しくなることを踏まえると、「持久力にしのぎます」とは絶対断言できないはずです。何故なら社会変化に比例して自社の組織力、そして「持久力」自体も劣化するはずだからです。
ですから、そのようにならないよう「専門特化」しながら対応策を講じなければなりません。
「専門特化」と同時にすべき対応策とは?
では、私が考えるAI時代に「包囲殲滅」されない為の対応策をついて解説します。
1,「自軍の厚さ」をどんどん厚くする
自社の「専門特化のサービス」を軍陣で例えるなら、相手軍隊と衝突する際の「自軍の厚さ」です。
「自軍の厚さ」が厚ければ厚いほど、崩れづらいので、どんどん厚さを増すようにすべきです。では、具体的には何をすべきか。
要は、「専門特化のサービス」を業績をあげることです。
2,自軍の動きに「遊び」を与える
「一気通貫の複数サービス」は、複数の兵種が混在しつつ統制がとれている軍隊のことです。
これに対応する、敵陣と対応するには、縦に自軍の厚さを増すと同時に「横」にも陣列を増やす必要があります。
この「横」の陣列が、複数のサービスとなります。
とは言え、何でもサービスを増やせば良い訳ではないので、適切な多角化を視野に「潜在的なチャンス」を顧客と接する中で見つけること。そして、そのチャンスにトライすることです。
「専門特化」のデメリットとして、視野が狭くなりやすいことをあげましたが、「潜在的なチャンス」を見つけるような遊び、姿勢があれば、視野が狭くなることはないはずです。
この「潜在的なチャンス」を見つけ、それにトライすること自体は当初大きくな動きでなくても、次の施策の結果大きくなる可能性があります。
3,自軍に他者も巻き込む
自社の「専門特化のサービス」や横に広げたサービスによって、お客様のどのようなニーズにお応えしたいのか。
お客様のニーズに本当にお応えしようと考えたときに、自社だけでお応えしようとするお考えもあるかと思います。
ですが、社会変化の早さに対応するには、他社をどう巻き込むかという姿勢が必要なのではないでしょうか。
これは私の組織のように小さい組織であればあるほど必要なはずです。
大企業なら必要ない考えかもしれません。
ですが、大企業も場合によっては専門特化した小企業との協力関係が必要かもしれません。
DXツールを利用した他業種との連携
今は本当にAIやDXツールの進化が凄まじく、他社と連携をしやすくDXツールも存在しています。
要は、「コンソーシアム」を組む際に利用ができるツールです。
このツール自体は年間20万円で現在利用できるというのですから、とんでもない時代が訪れるのは想像しているよりも早いのかもしれません。
ですので、他社をどう巻き込んで、自社と他社のデータを活用して新しいサービスを生んでいくことも可能なはずです。
このような活動を連発させることで自社をどう成長させていくか、という姿勢でいた方が良いと考えます。
「専門特化」と同時にすべき対応策のまとめ
「専門特化」と同時にすべき対応策のまとめとして、上記1~3の活動は全く別々の動きですが、どこか重なり合っているはずです。その重なり合う部分をもって統合された戦略を作れます。
是非、そのような戦略を練り上げながら、来るAI時代に負けない会社組織を作っていきましょう。
まとめ
私が、とある業界団体の会長に就任したことがあります。
そして、私の会長時代に、上記1~3の動きを業界団体の活動として取り組もうとしました。
業界団体だからこそ、共通するデータがあり、それを活用することで業界団体に所属する会員にサービスとして転嫁するでき、更に業界団体の立場であればこそ他業種とのコンソーシアムも組みやすいメリットを感じたからです。
ですが、DXの活動自体に、当時の役員からとてつもない抵抗を受けたので、さっさと任期満了で会長をおり退会もしました。
DX化自体に全く理解ができていない、知識もない状態で強く抵抗をしていました。
「業界団体として将来どう対応すべきか」という業界団体の本来の議題について役員会で審議ができる状況ではなく、DXに対する感情的な抵抗感だけで反対をされていました。
「DXの活動は、2025年から取り組んでも十分間に合いますよ。」
「余計な活動はしたくありません。」など聞いていて呆れるような発言の繰り返し。
役員たちのこのような姿勢を見て、役員お一人お一人を説得するようなレベルの状況にないと判断しました。
私が会長になった業界団体は、DXに関するノウハウは全くのゼロ、経済力もほとんど無いに等しい組織だったので、だからこそ早めに取り組むべきだと考えていましたが、2025年から取り組んでも間に合うと主張されている以上それなりにお考えがあるのでしょうから、この私が任期満了で退任しても何ら問題もないでしょうから、退任だけでなく退会も致しました。
業界団体こそDX化の主体者たるべき
この場で、このような私の経験を述べる理由は、本来の業界団体の存在理由、使命を考えると、とても重要な立ち位置ですし、DXの活動に取り組んでいない業界団体があるなら早く取り組んで欲しいと考えるからです。
私が考える業界団体が早くDXの活動を進めるべき理由
早く取り組むべき理由1
DXの活動を業界団体で行うというのは、業界団体自体にDXのノウハウが無ければ無いほど、DXの活動の中心となる組織から、それなりのノウハウ提供を要求せざるを得ません。
そして、その業界団体に提供してくれたノウハウに対する対価をお支払いできる経済力がなければ、ほぼ無料のノウハウ提供となってしまいます。
あくまでも業態団体である以上、所属する会員は、同じ市場におけるライバルです。
そのライバルに、自社のノウハウを無料で提供する、それを是とする組織があるのか。
あくまでも「是」とするのか「否」とするのかは、ノウハウ提供する組織が判断すべきことであって、業界団体の役員会ではありません。
業界団体にノウハウが無ければ無いほど、無理なノウハウ提供に期待するのではなく、DXの活動を早めに取り組むことで、ノウハウを蓄積していくべきです。
早く取り組むべき理由2
時間が経てば経つほど、DXツールは進化をします。当然、DXツールを利用方法によっては成果にバラつきも発生することがおきる。
つまり、業界団体のノウハウが無ければ無いほど、DXツールの活用法というノウハウのレベルもどんどん上がっていくということです。業界団体の会員さんも、業界団体が推進するDXの活動で成果が上がらなければ、価値がないと判断し退会されてしまうかもしれません。
時間が経過すればするほど、業界団体のDXの活動の難易度が上がります。
業界団体が抱えるDXのノウハウレベルに応じて、取り組みやすい時期が決まるはずです。業界団体にノウハウが無ければ無いほど、早めに取り組み、業界団体の活動を通してノウハウを蓄積していく必要があります。
早く取り組むべき理由3
ご存知の通り、DXツールを利用することがDX化ではありません。DXツールを利用することのほとんどは業務改善どまりです。DXツールを利用することで、どうDX化をしていくのか、何を目指すのか。
それこそが、私が先ほど述べた他社を巻き込んだ新しいサービスを作っていくことです。
これは業界団体のデメリットなのでしょうが、直ぐにまとまらないはずです。ですから、時間をかけて進めざるを得ないと考えます。
だからこそ、早めにDXの活動は進めるべきだと考えます。
業界団体で、まだDXの活動をされていない場合、是非積極的に推進していきましょう。
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