多角化には、適切なものと不適切なものがある。
いかに集中が望ましくとも、多角化との調和が必要である。さもなければ過度の専門化に陥る。同時に、いかに多角化が望ましくとも、あるいは避けがたくとも集中が必要である。さもなければ分裂と分散に陥る。
単純さと複雑さはともに必要である。単純さと複雑さは事業を反対方向に引く。この二つを対立させてはならない。調和させなければならない。共通の軸によって多角化を一体化することこそ、トップマネジメントの仕事である。このことは、小企業、中企業、大企業のいずれにも等しく重要である。
多角化を調和させ、一体性を保つための方法は二つしかない。
①一つは、共通の市場のもとに、事業、技術、製品、製品系列、活動を統合し、それによって高度に多角化しつつ一体性を保つことである。
②もう一つは、共通の技術のもとに、事業、市場、製品、製品ライン、活動を統合し、それによって高度に多角化しつつ一体性を保つことである。
共通の市場と共通の技術は一体性の要件である。
この二つが組織の共通言語となる。
組織内の相互理解も、この共通言語によってもたらされる。
(「マネジメント 基本と原則」P・F・ドラッカー著)