以前の投稿記事(企業側にとって「障がい者雇用」とは?その特徴と注意すべき点について)で、企業には一定数の「障がい者」を雇用する義務が「障がい者雇用促進法」で定められていることを紹介させて頂きました。
しかし、実際に「障がい者」を雇用するというのは、通常の採用よりも配慮が必要になります。
雇用した後にトラブルが起きたり、すぐに離職してしまうようなことを防ぐため、今回はトラブル防止・定着率を上げる方法をご紹介します。
目次
障がい者雇用で起きるトラブル
「障がい者を雇用」する際、いくつかトラブルが起きてしまうことがあります。
職場で起きてしまいがちなトラブルの内容を確認していきましょう。
口頭のみの指示で離職になったケース
精神的な障がい者の場合、口頭での指示では理解できないという場合があります。
とある企業に就職したAさんは、就職面接の際にそのことを伝えていました。企業側は、最初こそ紙に書いて指示を出していましたが、会議や朝礼などは口頭で行うことが多く、Aさんは今何しているのかわからずにパニックに。最終的に離職という形になってしまいました。
障がい者によっては、指示を1度で理解するのが難しい人や、指示を紙に書いていないとわからない人がいます。特に面接時にそのことを伝えられていたのであれば、企業側は寄り添った対応をすべきでした。
障がい者の方に「困っていることや悩んでいることはないですか」と確認したり、部署に紙での指示を出しているのかを確認したり、日々の業務での困りごとのヒアリング不足が招いた事態です。
■就労場所やロッカーなどが与える精神的苦痛
身体障がい者を雇用する際、車いすや器具で移動しやすい状態になっていることが重要です。例えば、就労スペースが狭くて車いすが通りにくい、階段が多い職場などは注意が必要です。精神障がい者の場合、対人恐怖症などで人の目を気にしてしまう人がいるので、就労するスペースや席の配置に注意が必要です。人によっては、両サイドに人がいると追い詰められてしまう人もいるので、席の配置などは注意が必要です。
また、ロッカーの場所が薄暗くてパニックになってしまった、行きたくないと思ってしまったという人も少なくありません。
■従業員の理解が得られず、パワハラやいじめ
障がい者雇用を行う際に、従業員の理解はとても大切です。どうして雇用することにしたのか、どのような仕事をしてもらう予定なのかを事前に従業員に知らせる必要があります。
「自分よりも簡単な仕事でお金を同じだけもらっている」という感情からいじめに発展したり、上司が「どうしてこんなこともできないんだ」と高圧的なパワハラをしてしたり、障がい者への理解が足りないと起きてしまいます。事前にしっかりと連絡しておくこと、会社全体で対処するようにしましょう。
障がい者トラブル・定着率を上げる方法
(1)こまめな面談
障がい者雇用でのトラブルや定着率を上げるために一番有効なのが、面談です。週に1回、月に1回など、定期的に行うことが大切です。現在困っていることや、悩んでいることをヒアリングして、対応が必要な部分は早めに対処することで、トラブルを防止することが出来ます。
面談をする上で注意点
・面談の担当はいつも同じ人にする
障がい者は、初対面の人に緊張してしまうものです。特に精神障害を持っている人は、周りからの目も気になるので、面談する人が変わると言いたいことが言えなくなってしまう可能性があります。面談をする人事担当を決めて、信頼関係を結ぶことが大切です。
・オープンクエッションを避ける
「最近どうですか?」「調子はどうですか?」というような、漠然とした質問は避けるようにしましょう。「今週新たに●●の業務が始まりましたが、困っていることはありませんか?」というように具体的な問いかけをするように心がけましょう。
(2)仕事面以外の配慮
障がい者が離職するのは、業務や職場の状況が良くないからというだけではありません。
・本人の体調面
・通勤手段(電車での通勤に耐え切れず離職するというというケースもある)
・人間関係
・休み時間やお昼の過ごし方
・薬の副作用
こういった点にも配慮する必要があります。体調面はこまめに確認、面接のときに確認することも大切です。人よっては、今月から薬の量を変えて身体がしんどい…という人もいます。その場合は、業務内容の見直しなどをするとよいでしょう。
(3)従業員からの聞き取り
ヒアリングは障がい者本人だけに行うのではなく、一緒に業務をしている人や、上長に確認する必要があります。障がい者本人が困っていること・周りの従業員が困っていることがあれば、早めに対処することでトラブルを未然に防ぐことが出来ます。特に、従業員からの聞き取りで、障がい者が言えなかった問題点の抽出が出来ることもあります。
1年雇用が継続するまでは、丁寧な対応が必要でしょう。
障がい者と働くということ
障がい者雇用促進法があるから雇用するという考え方ではなく、せっかく働いてもらうなら働きやすい環境づくりを行うというような前向きな考え方で取り組むとよいでしょう。障がい者雇用に慣れていてもトラブルは起きることがあります。ひとりひとり症状や困りごとは異なるので、配慮をしていくことが大切です。
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