当センターに寄せられるご相談の中には、急に「聞こえが悪くなった」ことによって【障害年金】を受給できますか、とのお問合せがあります。今回は、症状の一つとして聞こえが悪くなる『聴神経腫瘍』について、【障害年金】の認定基準及び職場による配慮等をご紹介したいと思います。
目次
『聴神経腫瘍』とは
概要
聴神経腫瘍とは、聴神経から発生する良性腫瘍で、小脳橋角部に発生する代表的な腫瘍です。良性腫瘍ですが、蝸牛神経や顔面神経など近傍に存在する様々な神経を圧迫し、聴力低下、耳鳴り、めまい、顔面神経麻痺などの原因となります。
症状
初発症状の多くは「聞こえ」の悪化です 。その他の症状に耳鳴り、めまい、ふらつき、頭痛などがあります。腫瘍が大きくなると周囲の重要神経を圧迫します。
顔面神経の圧迫では表情を作りにくくなります。三叉神経の圧迫では顔面の痛みがでます。舌咽神経、迷走神経の圧迫では嚥下障害や嗄声(させい:声がかれた状態のこと)などがみられます。外転神経の圧迫により複視も生じます。
聴神経腫瘍は片側のみに発生することが多く 、難聴が初発症状のことが多いため、突発性難聴と診断されることがあります。その場合、治療開始が遅れてしまうため注意が必要です。
職場での配慮について
『聴神経腫瘍』は、聴力の低下をお持ちの方が多い病気です。
傾向としては、大きな音を感じにくいというよりも、会話の内容がうまく聞き取りにくいといったお悩みをお持ちの方がいます。
手術によって聴力を維持されている方もいます。
聴力の低下というハンディキャップをお持ちの方は、特に電話での聞き取りが苦手という方もおられます。
「企業ができる配慮」としては、電話でのやり取りを避けられるような業務への配属や、複数人数での聞き取りが可能な体制を整えるなどの配慮が考えられます。
仕事をする上で本人が気を付けておくこと
ご自身の耳の聞こえが、どの程度であるかを主治医とともに把握することが大切となります。
またどのような音が聞こえにくいなど、音の種類についても職場に伝えておくことでトラブルを避けられる可能性があります。
場合によってはアラーム音や警告音によって、必要以上のストレスを受けてしまうことも考えられます。
そのときにはしっかりと伝えた上で、座席の変更や音の変更などの対処を求める相談をしましょう。
転倒しやすい症状などをお持ちの場合には、通路や座席回りに物を置かないようにするなどして安全を確保する必要があります。
その他の症状に関しても個人差のある病気ですので、どのような症状か、どのような程度なのか、しっかりと職場に伝えることが大切となります。
障害年金を考慮できる基準は
『聴神経腫瘍』による障害によって【障害年金】を受給しようとする場合の「認定基準」をご紹介したいと思います。
1,「聞こえの悪化」による障害の程度は、「純音による聴力レベル値(純音聴力レベル値)」及び「語音による聴力検査値(語音明瞭度)」により認定されます。
(1) 「聴力レベル」については、オージオメータ(JIS 規格又はこれに準ずる標準オージオメータ)によって測定されます。
※オージオメータについて
患者さんには手前のイスに腰掛けていただいて、ヘッドホンをつけて、写真のついたての向こう側に置いてあるオージオメータという器械で音を出して、閾値(どれだけ小さい音まで聞こえるか)ということを調べます。この机に付いているついたては、オージオメータを操作する手が見えないようにして、患者さんにボタンの操作から、音が出ているかどうか悟られないようにするためのものです。
右下の写真がオージオメータですが、大きなダイヤルは音圧(音の大きさ)を変えるためのものです。上並んだボタンは、周波数を変えるためのものです。 閾値でボタンを押すと、液晶画面にオージオグラム(閾値をグラフ化したもの)が表示され、プリントボタンで印字出来るようになっています。
これは20年ほど前の器械なのですが、それ以前のものは、手書きでオージオグラムを描かなければならなかったりしましたし、また、最新式では電子カルテにデータを送れるようになっていたりして、基本は同じとはいえ、付加的な機能は大分様変わりしてきているようです。
更に、気をつけなければいけないのが、今まで「聴覚の障害」によって障害年金を受給していない者に対して、1級に該当する診断を行う場合です。この場合、先程紹介したオージオメータの他に、聴性脳幹反応検査等の他覚的聴力検査又はそれに相当する検査を受けなければなりません。
※聴性脳幹反応(ABR)検査とは
耳への信号の伝わる過程の潜時を測定して脳幹の機能を評価します。新生児や乳幼児など聴力検査の実施が困難な場合に代用することもあります。聴神経腫瘍、多発性硬化症、難聴、脳幹障害などに有用です。引用元:聴性脳幹反応検査(ABR)
勿論、検査結果(実施した検査方法及び検査所見)を医師に診断書に記載して貰いますが、更に記録データのコピー等を提出(添付)しなければなりません。
(2) 聴力レベルのデシベル値は、話声域(周波数 500ヘルツ、1000ヘルツ、2000 ヘルツ)における純音の各デシベル値をa、b、cとした場合、次式により算出する。
平均純音聴力レベル値=(a+2b+c)/4
なお、この算式により得た値が境界値に近い場合には
(a+2b+2c+d)/6 で求められた値を参考にされます。
1 級 | ・両耳の純音聴力レベルが各々100デシベル以上のもの |
2級 | ・両耳の純音聴力レベルが各々90デシベル以上のもの ・両耳の平均純音聴力レベル値が80デシベル以上で、かつ、最良語音明瞭度が30%以下のもの |
3級 | ・両耳の平均純音聴力レベル値が各々70デシベル以上のもの ・両耳の平均純音聴力レベル値が50デシベル以上で、かつ最良語音明瞭度が50%以下のもの |
2,「めまい」「ふらつき」による障害がある場合、自覚症状が強く、他覚所見として眼振その他平衡機能検査の結果に明らかな異常所見が認められ、かつ、労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度のものと判断される場合は、障害等級3級又は障害手当金と認定される可能性があります。
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