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ドラッカーが言う「限界的存在」とは?
「限界的存在」という言葉は、あまり耳にしない言葉かもしれません。
私が、初め知ったのはドラッカー著「マネジメント」を読んだときでした。
それは下記の一文です。
『小企業は戦略を必要とする。
小企業は限界的な存在にされてはならない。その危険は常にある。
したがって、際立った存在となるための戦略を持たなければならない。
ニッチを見つけなければならない。
現実には、ほとんどの小企業が戦略を持たない。
機会中心でなく問題中心である。問題に追われて日を送る。
だからこそ小企業の多くが成功できない。』
「限界的存在」とは?
「限界的存在」とは、「会社が存在できる条件に少ない」という意味合いで、要は、「存在できる条件」の数が少なければ少ない程、一定条件下でないと存在できない。
会社が存在できる条件が少ないってことは、「存続する為の選択肢が少ない」ことを意味しています。
選択肢が少ないとどうなるか?ですが、「将棋」を想像して頂けるとご理解して頂きやすいかもしれません。「王将」の動ける「方向」が制限されている状態が、自社が選択肢が少ない状態を意味します。
「将棋」をやったことがある方ならもう察していらっしゃると思いますが、「王将」の動ける「方向」が少なくなれば成るほど、負ける可能性が高くなります。
社会変化が激しいときなら尚更、市場シェアが大きいことが企業の存続条件の全てではなく、一部でしかないのは明白です。
存続条件の1つ1つの価値が、今現在の社会変化によっては目減りするものがある。
だからこそ、先行きが不透明で不安に感じる人が多いのでしょう。
「限界的存在」にいつなった?
「限界的存在」が、企業にとって危険な状況だというのはご理解して頂けたと思いますが、ではいつ「限界的存在」に陥るのでしょうか?
1,そもそも「限界的存在」に陥っているとは気づかなかった、理解していなかった
2,解っていたけど「限界的存在」から抜け出せなかった
3,(知らない内に追い詰められて)気付いたら「限界的存在」になっていた。
気をつけるべきことは、社会変化が激しいときは、黙っていると「限界的存在」になる方向に向かう傾向にあることです。
「限界的存在」から抜け出す切り口は?
ではどのような「選択肢」を持つべきかが問題になります。
そして、紹介したドラッカーの言葉にある通り、多くの会社では「機会」ではなく「問題」を解決する為に日々を送っているから成功しないと言っています。つまり「機会」にあてる「労力」と「時間」、場合によっては「お金」がないというもう一つ問題を抱えています。
これらの問題を解決することが、特に社会変化の激しい時代の企業には求められていることです。
この問題に対して考え方についてのドラッカーの言葉を紹介します。
エグゼクティブが、未来に対し、十分な時間と思索を割いていないとは、よく聞く批判である。
エグゼクティブは、事業の未来について、もっと時間と思索を割かなければならない。
真の病因は、経済的な課題と取り組むべための知識や、方法論が存在しないことにある。
したがって、明日の問題に取り組むには、その前に、今日の問題を時間をかけずに効果的に解決できるようにならなければならない。
そこで、今日の仕事に対する体系的なアプローチが必要とされる。
企業にとって、本業の仕事は三種類ある。
(1)今日の事業の業績をあげる。
(2)潜在的な機会を発見し実現する。
(3)明日のために新しい事業を開拓する。
これら三つの仕事には、それぞれ異なるアプローチが必要となる。
異なる問題提起が必要となる。したがって、結論もまったく異なったものとなる。
しかし、これら三つの仕事は、互いに切り離すことはできない。
しかも、同時に行って行かなければならない。
すなわち、いずれも今日行わなければならない。そして、同じ組織によって、同じ資源、すなわち人、知識、資金を用いて、同じように企業家的なプロセスによって、行わなければならない。
未来は明日つくるものではない。今日つくるものである。
主として、今日の仕事との関係のもとに行う意思決定と、行動によって、今日つくらなければならない。逆に、明日をつくるために行うことが、直接、今日に影響を及ぼす。
三つの仕事は重なり合う。したがって、一つの統合された戦略が必要である。さもなければ、三つの仕事のいずれも不可能となる。
これら三つの仕事に同時に取り組むためにはもちろん、そのうちの一つに取り組むためにさえ、経済的な組織としての企業の現実、その経済的な成果をあげるための能力、利用しうる資源と可能な成果との関係について、理解しておかなければならない。
さもなければ、単に目まぐるしさに翻弄されるだけである。しかし、そのような理解は、既成の概念によって与えられはしない。企業ごとに手に入れなければならない。(「創造する経営者」P・F・ドラッカー著より)
「限界的存在」から抜け出す切り口は、本業の仕事は三種類の内、「(2)潜在的な機会を発見し実現する」、「(3)明日のために新しい事業を開拓する」が中心となりますが、その土台となるのが「(1)今日の事業の業績をあげる」ことであることは言うまでもありません。
「限界的存在」から抜け出す「切り口」をイメージできる事例
「限界的存在」から抜け出す「切り口」は先に紹介した通りです。
でもこれを知ったからといって、明日から何か行動できるかというとそんなことはできません。
そこで参考になる事例を紹介したいと思います。
石川県になる旅館「加賀谷」。https://www.kagaya.co.jp/
「加賀谷」では、お客様の部屋に配膳する際に、食膳を人が運ばず、設備で行わせています。
直接、配膳をスタッフが行うと、配膳することで頭が占められ、直接お客様と接する機会がありながら、何も得ずに終わってしまいます。配膳を設備させることによって、配膳はさせずにお客様と接した際に、「ご満足して頂けることは何か」に意識を集中させることができるようになったそうです。
この「加賀谷」は、「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」で36年連続総合日本一位になってようですよ。https://www.kagaya.co.jp/information/anniversary.php
「加賀谷」の経営理念
https://www.kagaya.co.jp/company/principle/
「加賀谷」の事例をどう参考にしたら良い?
「配膳スタッフ」からお客様をおもてなしの第一線の役を担って貰うことは、経営者側で判断すべきことで、従業員側が自主的にできることではありません。
企業にとって、本業の仕事は三種類ある。
(1)今日の事業の業績をあげる。
(2)潜在的な機会を発見し実現する。
(3)明日のために新しい事業を開拓する。
この3つを一つの「統合された戦略」として実行する為には、人がやるべきことと機械・システム等にやらせることを体系立てて職場設計し改善をしていくことが必要です。
DX導入は義務ではない
「統合された戦略」の下、機械・システム等で「労力」・「時間」に余力を持てるようにすることが第一歩です。
今、話題の「DX化」は、まさにその為のツールです。
確かに日本政府から「DXレポート」によって2025年までに「DX化」するように要望が出されていますが、だからといって「DX化」は当然義務でもなければ何でもありません。ですが、先程から述べている通り「DX化はチャンス」です。
「加賀谷」が配膳と機械にさせていたように、自社の業務を「DX化」することで他のことができる余力を持てるようにすることができるはずです。
私の知人の中には、「日本政府がDX化をするように言っているけど、まだまだDX化なんて出来るものではない」と仰っている方側がいますが、周りの様子から判断して「自社でDX化の導入はまだしなくても良い」とするのではなく、「周りがDX化していないのであれば、当社ではDX化を率先して導入して差別化をしていく」と能動的に行動すべきことだと思います。
DX化で、今まで無理だったことが可能になった。
DX化で、今まで目先のことしかできなかったが、将来への余力を持てるようになる。
2025年はゴールではなく、AI時代に向けてのスタート地点。
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