大人になってから「知的障害」と診断を受けるケースが!?【障害年金】知的障害による請求事例

旭川障害年金相談センターの米田です。

最近は大人になってから「知的障害(精神遅滞)」や「発達障害」と診断を受けるようなことを耳にすることがあります。今回、「知的障害(精神遅滞)」と診断されるまで周囲になじめずご苦労された方からのご依頼の案件をご紹介します。何かのご参考になればと思います。

周囲になかなか馴染めない

STさんは幼少期に人見知りが激しく、泣いて母親にくっついていることが殆どでした。幼稚園では友達を作れず、小学生になっても低学年からずっと成績も悪く運動能力も劣っておりクラスから余り相手にされていませんでした。その後も忘れ物が非常に多く、全日の高校への進学は難しかったため夜間部に入学し、卒業後は観光ホテルに就職しました。

仕事先で上司や同僚から指示を受けると、内容が理解出来ずに混乱しパニックになり、泣いて立ち去る事を繰り返したため周囲となじめず、抑うつ傾向となったため退職し精神病院を受診しました。

知的障害と診断

病院では当初うつ状態として薬物療法を行いましたが、その後の検査にて「知的障害(精神遅滞)」の判断を下されフォローを受けました。

「知的障害(精神遅滞)」は、「知的能力」と「適応能力」の両方の程度を見て判断されます。
(1)「知的能力」とは、知的活動を行う能力のことで、例えば、読み書きや計算、そして、物事を理解したり、考えたり、判断する思考能力のことです。「知的能力」は、知能検査によって「知能指数(IQ)」と利用して計測することができます。
下記の表は、療育手帳のIQを基準にした障害程度の表です。ご参考にして下さい。
(2)「適応能力」とは、社会生活に適応する能力のこと。集団として行動が出来たり、集団の中での自身の役割を理解し果たすことができたり、周囲の人たちと良好な人間関係を築くことができるなどの能力をのことです。
しかし、「知的能力」が、①IQが単純に低いだけでは「知的障害」とは判断されるものではありません。
同時に、②「適応能力」にも制限があり、かつ、③これらの症状が発達期に現れているという、
この3つの条件が揃って「知的障害」の可能性がある考えられます。
付け加えて説明すると、18歳を過ぎてから起こった「知的能力」や「適応能力」の低下は、「知的障害」とは判断されないことになります。

知的障害の程度別の特徴

個人によってその状態像は変わりますが、参考になればと思い、アメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)による「知的障害」の4つの段階を紹介します。

軽度の障害

暗算やおつりの計算といった金銭管理、抽象的な思考や文章の読み書き、計画を立てること、優先順位をつけることなどが苦手である場合があります。言葉の使い方やコミュニケーションにおいて、同年代のほかの人より未熟な点が見られることもあります。
身の回りのことを行うことに支障はないことが多く、家事や子育て、金銭管理、健康管理上や法的な決断は、支援があればうまくできることが多いようです。

中等度の障害

成人でも、学習技能は小学校程度の水準にとどまっていることが多いとされています。複雑な社会的な判断や意思決定、人生における重要な決断を行うときは支援が必要となります。コミュニケーション能力に制限があったり、暗黙の了解とされるような事柄の理解が苦手である場合があります。
適切な支援や教育によって、身の回りのことや家事ができるようになる人が多いようです。支援があれば、職種や環境によっては自立して仕事をすることも可能であるとされています。

重度

書かれた言葉や数量、時間や金銭などの概念を理解することが難しいため、生涯を通して、食事や身支度、入浴など生活上の広範囲にわたる行為において支援が必要であることが多いようです。コミュニケーションにおいては「今、この場」の状態についての、単語や句を使っての簡単な会話のみ可能です。

最重度の障害

会話や身振りを使ったコミュニケーションは、非常に限られた範囲であれば理解できることが多いようです。身振りや絵カードなどのコミュニケーション手段を使っての表出や他者からの感情の読み取りによって、他人と意思疎通を行うことができます。日常生活において他者からの指示や援助を必要とすることが多くなります。

障害年金の手続きについて

診断書に記載されている病状の他に、「障害年金」を請求する場合、「病歴・就労状況等申立書」に幼少期から記載をしていく必要があります。ですので、御本人様やご家族の方から、生い立ちから自覚症状の程度・治療経過・日常生活状況を聞き取り、詳細な病歴申立書を作成し、年金事務所に提出したところ、結果障害年金2級に認定されました。

大人になるまで、色々と問題を抱えながらでも健常者として生活をして来た背景から、はっきりと何かしらの障害を抱えていると解りずらい状態であることが多い為、「病歴・就労状況等申立書」の聞取りが一番のポイントになると思います。

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