製品、市場、流通チャンネルのそれぞれが、事業活動として、それぞれ業績をもたらす。
したがって、それぞれの収益上の貢献をもたらすとともに、コストを発生させる。
それぞれの資源を割り当てられ、それぞれの将来性をもち、市場におけるリーダーシップ上の地位を占める。
とはいえ、これら三つの領域は、総合的に、かつ互いの相関関係において分析しなければならない。
まったくのところ、最も共通してみられる業績不振の原因の一つは、これらの三つの領域間の不適合にある。
(中略)
市場と流通チャンネルは、業績をもたらす領域として、製品よりも重要なことがある。
製品は、経理上も事業の一部である。事業の領域内にある。しかし、市場と流通チャンネルは、経済的にのみ事業の一部である。
経済的には、製品は、市場にあって、流通チャンネルを通じて、最終用途のために購入されて初めて製品となる。
しかし、市場と流通チャンネルの方は、製品からは独立して存在する。一義的に存在する製品の方が二義的に存在する。
市場と流通チャンネルは、事業の外部にあるため、製品のように自由にコントロールはできない。製品の変更は命令できても、市場や流通チャンネルの変更は命令できない。確かに、ある程度は市場や流通チャンネルを変化させられるが、ごくわずかにすぎない。
(中略)
流通チャンネルは、重要であるばかりではない。そこには、特有の極めて複雑な事情がある。流通チャンネルは、流通チャンネルは、流通の経路であると同時に顧客でもある。流通チャンネルは、製品に適合していると同時に、市場、顧客、最終用途に適合していなければならない。そしてなおかつ、製品の方が、顧客としての流通チャンネルと適合していなければならない。
もちろん、流通チャンネルが製品や市場に合っていなければ、失敗する。製品は市場に到達しない。購入されないし、業績をあげることもない。しかし、製品の方が顧客としての流通チャンネルに適合していなければ、そして同時に、販売方針が流通チャンネルに適合していなければ、顧客としての流通チャンネルが買ってくれない。
普通、ブランド品の大衆消費財メーカーは、このことを承知している。彼らは、主婦と小売店という、異なる期待と要求をもつ二種類の顧客をもっていることを知っている。しかし、大衆消費財以外のメーカーのうち、このことを知るものはあまりない。
(「創造する経営者」PFドラッカー)