市場にも「現在」という期間、すなわち市場における成果という観点から意味をもつ時間的長さというものがある。
1920年代半ばには、GMは、自動車市場における「現在」を5年としていた。
1年はよい年、3年はまあよい年、あとの1年は悪い年だった。
これは中古車市場の事情による定義だった。
GMは、この5年というサイクルに合わせて、投資、業績評価、研究開発を行った。
そして投資は、GM自身の公式の数字によれば、この5年という期間における平均予想操業度80%の場合の予想利益率によって決定していた。
この予想利益率が小さかったり、平均予想操業度が80%以下であれば、投資を認めなかった。
同じように、研究開発も、小さな設計変更や基礎研究を除き、最短3年、最長5年と設定していた。
これらの例が示すように、自社や産業にとっての「現在」という期間の決定が、いかなる活動を行うかを決定することになる。
この「現在」の期間よりも短い期間に成果をあげようとする活動は、時間や資源や資金の浪費である。
またカーチス社のように、あまりに「現在」の期間を短いものにし、その期間を超える活動をすべて禁止することは、不毛の宣告である。
(創造する経営者、P.F.ドラッカー)