企業は資源現象ではなく、社会現象である。
そして社会現象は(中略)一方の極の10%からせいぜい20%というごく少数のトップの事象が、成果の90%を占め、残りの大勢の事象は、成果の10%を占めるに過ぎない。
これは、市場についても言える。数千の顧客のうち、ごく少数の大口顧客によって、受注の大半は占められる。
(中略)
社会現象の分布に関するこの簡単な仮説は、次のような極めて大きな意味をもつ。
まず第一に、業績の90%が、上位の10%からもたらされるのに対し、コストの90%は業績を生まない90%から発生する。
言い換えると、業績とコストとは関係がない。
すなわち業績は利益と比例し、コストは作業の量と比例する。
第二は、資源と活動のほとんどは、業績にほとんど貢献しない90%の作業に使われる。
すなわち資源と活動は業績に応じてではなく、作業の量に応じて割り当てられる。
その結果、高度に訓練された社員など、最も高価で生産的な資源が、最も誤った配置される。
第三に、利益の流れとコストの流れは、同じ量ではない。
利益を生む活動に意識的に力を入れないならば、コストは、何も生まない活動、単に多忙な活動に向かっていく。
資源や業績と同じように、活動やコストも拡散していく。
したがって、企業活動の評価と、方向付けの見直しを常に行わなければならない。
<しかも、この見直しは、見直しが最も必要でないと思われる活動、すなわち現在の事業について最も必要とされる。/p>
(中略)
事業を理解するためには、事業全体を見なければならない。
(中略)
部分的な分析では、事実が誤って伝えられ、方向を誤る。
事業全体を一つの経済システムとして見ることによって初めて、真の知識を得られる。
(「創造する経営者」P・F・ドラッカー著)