マネジメントは、経済を自らつくるもの

マネジメントするということは、単なる受動的、適応的な行動ではない。望ましい結果をもたらすために行動することである。

(中略)

確かに、経済の動きに対し、迅速かつ知的、合理的に適応することは必要である。しかしマネジメントの働きは、受け身的な反応や適応にはとどまらない。 マネジメントには、新しい経済をつくる責任がある。その経済の中にあって、変化を計画し、その実現の先頭に立ち、担い手となる責任がある。そして、企業活動の自由に対する制約を除去する責任がある。

したがって、実現が可能なこと、すなわち経済学のいう経済的付与は、一方の柱であるにすぎない。実現が望ましいことが、もう一方の柱である。 人間は、環境の完全な主人になることはできず、可能性の枠から出ることはできない。しかし、実現が望ましいことを可能なものとし、続いてそれを実現することはできる。そしてそれこそ、マネジメントに特有の仕事である。

マネジメントは、単に経済の中に投げ出された一存在ではなく、経済を自らつくるものである。マネジメントは経済環境の主人公として、意識的かつ目的的な行動によってその環境を変えるかぎりにおいてのみ、真にマネジメントしているといえる。

したがって事業のマネジメントとは、目標によるマネジメントである。

(「現代の経営」P.F.ドラッカー)