ジーメンスは、発電機を発明した結果として、電車を開発したわけではない。
彼は、市内交通としての電車という産業を構想し、そのための動力源として発電機を開発した。
同じようにエジソンも、実用電球を発明した結果、発電所や変電所や配電システムを完成したのではない。
総合的な電力供給という産業を構想し、そこに欠落していた電球を開発した。
換言するならば、彼ら二人は、最初の真のイノベーターだった。
彼らは、新しい知識や能力にとっての機会、すなわちイノベーションの機会を体系的に明らかにした。
そして、その新しい知識や能力や技術を手に入れるために働いた。
彼らは、最初の本当のシステムズ・デザイナーだった。
彼らは、長期にわたって生産的な活動を続けたが、30歳のころには、すでに大きな成功を収めていた。
彼らは単なる新しい機械や設計ではなく、新しい産業を生み出していた。
彼らは、電気のいかなる応用に、産業としての最大の成功と利益の機会があるかを問うことによって、経済的な機会を最大のものとした。
日本の近代工業国としての発展からも明らかなように、機会を最大のものにするためには、必ずしも技術上のイノベーションを必要とはしない。
(創造する経営者、P.F.ドラッカー)