エグゼクティブが、未来に対し、十分な時間と思索を割いていないとは、よく聞く批判である。
(中略)
エグゼクティブは、事業の未来について、もっと時間と思索を割かなければならない。
(中略)
真の病因は、経済的な課題と取り組むべための知識や、方法論が存在しないことにある。
(中略)
したがって、明日の問題に取り組むには、その前に、今日の問題を時間をかけずに効果的に解決できるようにならなければならない。
そこで、今日の仕事に対する体系的なアプローチが必要とされる。
企業にとって、本業の仕事は三種類ある。
(1)今日の事業の業績をあげる。
(2)潜在的な機会を発見し実現する。
(3)明日のために新しい事業を開拓する。
これら三つの仕事には、それぞれ異なるアプローチが必要となる。
異なる問題提起が必要となる。したがって、結論もまったく異なったものとなる。
しかし、これら三つの仕事は、互いに切り離すことはできない。
しかも、同時に行って行かなければならない。
すなわち、いずれも今日行わなければならない。そして、同じ組織によって、同じ資源、すなわち人、知識、資金を用いて、同じように企業家的なプロセスによって、行わなければならない。
未来は明日つくるものではない。今日つくるものである。
主として、今日の仕事との関係のもとに行う意思決定と、行動によって、今日つくらなければならない。逆に、明日をつくるために行うことが、直接、今日に影響を及ぼす。
三つの仕事は重なり合う。したがって、一つの統合された戦略が必要である。さもなければ、三つの仕事のいずれも不可能となる。
これら三つの仕事に同時に取り組むためにはもちろん、そのうちの一つに取り組むためにさえ、経済的な組織としての企業の現実、その経済的な成果をあげるための能力、利用しうる資源と可能な成果との関係について、理解しておかなければならない。さもなければ、単に目まぐるしさに翻弄されるだけである。しかし、そのような理解は、既成の概念によって与えられはしない。企業ごとに手に入れなければならない。(「創造する経営者」P・F・ドラッカー著より)
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