『現在のような成熟期、あるいは向かい風型の不況期にあっては、差別化のなかにこそ基本的な戦略原理が求められる。
(中略)
何に対して差別化するのか、その対象をはっきりさせないと、差別化は生まれない。
一般に差別化戦略は、①自社のこれまでの路線への差別化、②先発に対する差別化、③強者に対する差別化、④地位に上位に対する差別化という、四つを対象に展開される。
まず、①の自社のこれまでの路線への差別化だが、これはもちろん、自社のこれまでの路線が戦略的に正しいものであれば必要ないことだ。(中略)
次に、②の先発に対する差別化だが、こうすることで後発の逆転現象が生まれる。後発が先発の真似をして逆転に成功したためしは、まずない。もし逆転に成功したとしたら、それはことごとく先発に対する後発の差別化の結果と見ていい。
③の強者に対する差別化については、(中略)(1)局地戦で勝つ、(2)一騎打ち戦で勝つ、(3)接近戦で圧勝する、という三つである。(4)一点集中主義に徹する、(5)陽動作戦をとる、というのも強者に対する弱者の差別化といえよう。こういった強者に対する差別化は、(中略)強者の死角を狙うなかで具体的に生かされていかなければならない。
最後に④の地位の上位に対する差別化だが、いうまでもなくナンバーワンにとって、この戦略は必要ではない。
ナンバーワンは下位からの差別化にいかにミートしていくかだけを考えていればいいわけで、基本的に差別化が必要なのは二位以下の企業である。
二位の企業は、ナンバーワンに対する差別化に徹し、絶対にナンバーワンの企業の模倣をしないことだ。
同時に二位は、三位に対しては逆にミートし、これを徹底的に叩いていかなければならない。足下の敵を叩く「弱い者いじめ」のルールである。
三位の企業も、二位との差別化、四位へのミートを考えるべきだ。あるいは、攻撃してくる二位を抱き込んで逆にナンバーワンに向かわせるよう、誘導する作戦も必要になってくる。
ともあれ、地位間の戦略の基本は、上位への差別化、下位へのミートである。
』(ランチェスター戦略の基本がわかる本 / ランチェスター戦略研究会・著)