最大の成果をあげるべく、「理想企業」を最も魅力的な可能性に集中し、「機会」の最大化を図る。

事業を成功させるためには、三つの保証済みのアプローチがある。

(1)利用しうる市場と知識から最大限の成果をあげるべく、あるいは、少なくとも、長期的に見て最も有利な成果をあげるべく、「理想企業」のモデルからスタートする。

(2)最大の成果をあげるべく、「理想企業」を最も魅力的な可能性に集中し、「機会」の最大化を図る。

(3)利用しうる資源が最大の成果をもたらす機会を発見することによって、「資源」の最大化を図る。

上記(2)について

最大の経済的効果をもたらす機会は何であるかを考えることからスタートするものである。

機会の最大化のアプローチの最もよい例は、電機産業をつくり出し、つまるところ今日の電気社会を生み出した二人の人間、ドイツのウェルナー・フォン・ジーメンス(1816-92年)と、アメリカのトーマス・A・エジソン(1847-1931年)に見ることができる。

彼ら二人が人間社会に対して与えた影響は、フォードやスローンよりもさらに大きかった。

ジーメンスが何を発明したかに対する答えは、実用の発電機である。電機産業と言ってもよい。

エジソンが何を発明したかに対する答えは、電球である。電力産業と電灯産業と言ってもよい。

彼ら二人は、だれよりも多くの技術開発を行った。しかし、彼らと同じ発明に取り組んでいた者は、ほかにもいた。

彼ら二人の発明は、すべてほかの人間によって見通され、あるいは完成されていたとさえ言えた。

しかし、新しい大きな産業を構想し、築き上げたのは、彼ら二人だった。

彼らは、自分が何をしているかを承知していた。電気の分野での科学上の発見、特にあの偉大なファラデーの発見によって開かれた新しい道に夢中になったのは、彼らだけではなかった。

しかし彼ら二人だけが、この新しい知識がいかに大きな機会をもたらすか、そして、その経済的機会を実現するためには、いかなる技術的発明や開発が必要かを自問した。

(創造する経営者、P.F.ドラッカー)